金色



「ねえ、スマイル。歌って、聞かせて、妖怪Zの唄を」


 ボクはコクリとうなずく。ギターを構えて、


   オバケが来る 来る 来る


 彼女の頭はずっと同じ高さに保たれていた。


   うしろ振り返るとそこに ギャンブラーZ



 それがふるっと垂れてしまったのは、コーラスも中盤の頃のことで。


   ああ 正義の味方だって大変なんだ


「わたし、きっと忘れないよ。ううん、絶対に忘れない」

 声が湿っている。それでわかった。ああ、彼女は泣いている。
 見えないけれど、とてもとても、それはきれいな涙。
 ギターを弾くボクの指は彼女の涙をぬぐってあげられない。


   オバケが来る 来る 来る



 金色がこぼれた。


 鳩は今でも嫌いだ。
 でも、キミの背中の白いやつは、


「さようなら、スマイル」

 振り向いて歩み寄る彼女は、ボクに笑いかけた。
 うすく金色の目を細めて。


   オバケじゃない ない ない


 差し出しかけた彼女の手を知っている。
 もし、ボクがそこで弾くのを止めていたら、もし、ボクが彼女の金色から目を逸らさなければ、
 その手は、その指は、その腕は、キミの金色すべてはボクを優しく、そうふわりと包み込んでいたのだろう。
 ボクは、知っている。




    ギャンブラーZ ――― 。

「さようなら、ポエットちゃん」


 彼女はもう一度笑いかけた。
 今までで一番きれいで切なくて悲しそうで、何よりも何よりも、
 天使のような、笑顔だった。


 ゴメンよ、ポエットちゃん。
 ボクはズルいんだ。

 キミはボクの熱も冷たさも無骨さも、すべてを自分の体に刻み付けても、
 それでも幸せを振り撒くことができるのだろう。

 でもね、ボクはダメなんだよ。
 今、キミに触れてしまったなら、キミの背中のそれを乱暴にもぎとってしまう、
 自分は一生光に照らされる存在であるような、バカみたいな妄想にとり憑かれてしまう。


 だから、ゴメンよ。

 キミのその何よりも美しい金色を、こぼれるその涙を、
 ぬぐい去ってやることは、ボクにはどうしてもできないんだ。













   アトガキ

 私の憶測ですが、ポエットはいつか絶対修行を終えたら、ホワイトランドに
 帰っちゃうと思うんですね。
 で、しかももう二度とホワイトランドから出られなくなるのではないかと。
 生活の不自由は一切ないんですよ。そこの中ならこの世界以上に自由が許されている
 気がしますし。
 ということで、ポエットがホワイトランドに帰る1日前とか。





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