ビビビ ビ ビ
ボク イク キメタ、ヨ アヒルニノッテ タビニデル ヨ
オ オ オヒメサマヲ タスケニ イクヨ

P−14 ナニヲカンガエトル!  ロボット ニハ ジュウデンガヒツヨウナンヨ!ワカットルノ カ!?

ソンナコト シヨッタラ ショートシテ ウゴケナクナルニ キマットル ・・・!

ビビビ
ソレデモ イカナイト イケナイ カラ !!


そうしてP−14は、仲間のロボットの忠告も振り切り、途方もない世界の旅へと出発したのでした。
P−14は広い世界で、たくさんの出会いと別れを繰り返しました。
優しい人も心無い人も・・・。それでもやはり、心の奥に優しさの火が灯っていない人なんてひとりもおらず、P−14は友達のアヒルと励ましあいながら旅を続けました。


ある時P−14はお姫様を見ました。
赤い白い綺麗なドレスを身に纏ったお姫様でした。

ビビビ

お姫様の瞳はどこを捉えているのか判然としません。
まるで濁ったガラス玉のように、いつも前を向いていました。

ビビビ

お姫様は、入り組んだ路地の先にあるお店のショウウィンドウの中で立ち尽くしていました。
P−14は毎日お姫様へ挨拶をしに行きました。

ビビビ
ゴ ゴキゲンヨウ 。 キョウモ ヨイオテンキ デス ネ 。
オ オ オハナヲ ツンデキマシタ 。 キット オヒメサマニ ニアウトオモウ デス 。

毎日、毎日。
P−14は飽きることなく、お姫様のために赤い花を摘んで持って行きました。

「・・・」

それでもお姫様が返事をすることはありません。
それどころか、指先がぴくりと動くこともないのです。
お店の中だから、風が吹いてドレスが閃くこともありません。固く強張ったまま。
それでもそのお姫様は世界中の何よりも美しい顔をしていたのです。

ビビビ ビ ビ

P−14は自分がロボットに生まれてよかったと思いました。
お姫様がどんな存在なのか知っていても、涙を流さなくてすむのです。
たとえ叶わない恋心だったとしても、流すための水分も流すための目も、何もないのですから。

ビビビ ビ ビ

P−14は自分がロボットに生まれてこなければよかったのにと思いました。
お姫様が心を開かないのは・・・
もし自分が王子様のように、魅力的な人間だったなら・・・
この美しいお姫様の生きた表情を、見ることができたでしょうか。

オ オ オハナ ヲ ・・・

P−14はうまく「お花」と発音できません。
必ず音が詰まって変なふうに飛び出してしまうのです。
それでも、毎日、毎日、ロボットのP−14はあのお店に通いました。


「私はあなたを知っています。毎日、この時間になるといらしていたのを、記憶しております。」

ある日、それはあまりにも唐突に、P−14がお店の前で立ち止まるとお姫様が話し出したのです。

・・・

P−14はただ黙ってお姫様の綴るたくさんの言葉に聞き入りました。
鈴の音よりももっと何か清らかで、この世のものでは表現しきれないほどに、お姫様の声は美しいものでした。
そうまるで、世界の外から話しかけられているような。

「私はたった今、心をこの胸に与えられましたわ。それまではずっとずっと、ただの人形でした。
 それなのに覚えているのです。私は多くの方の手に渡りました。
 悩みを打ち明けられたことも、馬のお人形と手を繋いで踊ったことも、もっともっと私は経験してきましたわ。
 あなたのことも、たった今気づいたけれど、記憶が言っているのです。
 あなたは、私に、何百もの赤い花を・・・私はあなたに、何も、何も、何も・・・!」

ビビビビビビー!!!

「!」

P−14はゆっくりと微笑みました。
きっとお姫様を目覚めさせた王子様は、自分ではないでしょう。
きっと別の何かがお姫様の凍った心に触れたのでしょう。
ええ、それでも・・・お姫様は動いて、話して、沈んだ顔も驚いた顔もできるようになったのです。

オ オ オ オハナ ヲ ・・・ !

P−14はいつもより多く言葉を詰まらせました。
赤い花がしおれてしまわぬように、できるかぎり優しく握っていたつもりです。

けれども花は力なくくたびれておりました。

「・・・ありがとう」

お姫様の目からはきらきらと光る二本の筋がつたっていました。

・・・

P−14はそっと、ショウウィンドウの前にその赤い花を横たわらせました。

P−14は思いました。
やっぱり人間でなくてよかったと。
もし人間だったなら、みじめにボロボロと泣き崩れていたことでしょう。

ロボットならば スキ という気持ちは隠すことなくさらけ出すものでしょうか。


ド ド ドウ イタシマシ テ

P−14は言葉を詰まらせながら返事をしました。






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