闇を灯しに



闇を一つ。闇を二つ。

この廊下のろうそく全てに闇を灯せば「あの人」の心の奥にたどり着く。
だからこうして腕に抱いた闇の一つ一つをろうそくの芯にかざすんだ。

闇を一つ。闇を二つ。

どこまでも、どこまでも続く廊下。ちっとも減らないろうそくの数に、途方もない悲しさを覚えることだってある。
でも、そんな時はいつだってスマイルが笑いかけてくれる。
一緒にお話しすると、だんだんと諦めちゃダメだ、っていう気持ちが湧いてくる。
それは、たとえスマイルが、一方的にギャンブラーZのことを話すだけでもいいの。
「うん、ポエ頑張るからね」って答えると、スマイルは元気にしてくれる笑顔を見せ、とん、と背中を押してくれる。

闇を一つ。闇を二つ。闇を三つ。

そうしてまた、ろうそくに灯しながら前に進むことができる。


「あの人」の心はうんと深いのだろう。「あの人」の心の奥はうんと遠くにあるのだろう。

でも、大丈夫だよ。
きっと、あとちょっとだから。もうすぐ、着くから。
この細くて長い廊下を、灯した闇で明るく照らしたなら、「あの人」は涙を流して泣くことができると思うの。


「こんにちは、ポエットちゃん」
「こんにちは!スマイル」

ねえ、スマイル。もう笑わなくていいんだよ。
スマイルの笑顔はポエットを強くしてくれるけど、スマイルが笑うといつも心の奥が苦しそうに泣いてるの。


後ろを振り返ると、灯した闇の中でスマイルの笑顔が空気のように揺れていた。
泣きそうになるのをぎゅっと堪えて、また一つ火を点ける。


『ねえ、スマイル。まだかな?どうしたら「あの人」の心の奥に着けるかな?』

包帯の奥で、前髪の奥で・・・奥だから、スマイルが笑っているのかも分からない。

『さあ。ボクは「あの人」のことなんて、なんにも知らないから分からないよ』

背中を押して送り出そうとするスマイル。一瞬だったけど、闇のように赤い目を見上げた。


ねえ、スマイル。
どうしたらポエはあなたの心の奥に届くのかな?


「ポエットちゃん?」

スマイルが、聞いてくる。疲れたピエロみたいに無理矢理笑って。
首を振る。

「ううん」


闇を一つ。

迷いを横に振り切って、スマイルのろうそくに小さな赤い闇(ひ)を灯した。






アトガキ
スマポエだとスマイル視点ばかりなので、ポエット視点にチャレンジしてみました。
これの前にやや長めのスマイル視点のスマポエを書いたのでそっちもアップできるといいのですが。






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